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EMS(エネルギー・マネジメントシステム)とは?
2023/06/13
燃料価格の高騰や電気代の値上げの影響で、家庭だけでなく企業にとってもエネルギーコストの削減は重要な課題となっています。
エネルギーコストの削減には効率よくエネルギーを使用することが重要です。そのため、各方面からEMS(エネルギー・マネジメントシステム)の活用に注目が高まってきています。
そこで今回は、EMSについてご紹介します。
EMSとは?
EMSとはエネルギーマネジメントシステム(Energy Management System)の略で、エネルギーの使用状況を管理して「見える化」するシステムのことです。
なぜEMSが注目されるようになったのでしょうか?
実は、EMSが注目される背景には日本のエネルギー自給率が関係しています。
2020年度の日本のエネルギー自給率は「11.2%」であり、他の国と比べてもとても低い水準です。
石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料はほとんどが海外からの輸入であり、日本のエネルギー資源は海外に大きく依存しています。
そのためウクライナ情勢や円安などの海外の要因によって、エネルギーコストは大きく左右されてしまうのです。
不安定な状況の中においてエネルギーコストを抑えるためには、効率よくエネルギーを使用することが重要であり、そのためにもEMSの導入が必要不可欠となってきています。
参考URL(令和3年度エネルギーに関する年次報告 (エネルギー白書2022))
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2022/pdf/
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2022/pdf/2_1.pdf
主なEMS
EMSはオフィスや商業ビル、住宅、工場、マンション、広範囲にわたる地域など、管理する建物によって細かく分類されています。
①BEMS(ベムス)
BEMSは「ビル・エネルギー・マネジメントシステム」の略で、オフィスビルや商業ビルを対象としたエネルギー管理システムです。建物内のセンサーや監視装置が空調や照明などのエネルギー使用状況を「見える化」します。そして、そのデータを元に建物全体の改善プランを作ることで、効率よくエネルギーを使用することができコストを抑えることができます。
また、設備機器の稼働を自動で制御することができるので、消費の多い時間帯の電力使用を削減するためのピークカットが可能です。
②HEMS(ヘムス)
HEMSは「ホーム・エネルギー・マネジメントシステム」の略で、住宅を対象としたエネルギー管理システムです。住宅で使用しているエネルギー使用量や稼働状況を「見える化」し、消費者自らエネルギーを管理することができるようになりました。HEMSは私たち一人一人の生活に一番身近なEMSであり、インターネット環境を使用しています。住宅内のインターネットにつながる照明、エアコン、給湯器、太陽光発電、蓄電池、燃料電池、スマートメーター、EV/PHV充電器などの機器とHEMSコントローラーと連携。エネルギー使用量や稼働状況を確認することができます。
また、スマートフォンとも連携することで屋外からでも自宅内の状況を確認することができ、遠隔操作することも可能です。
日本政府は2030年までに全世帯にHEMSを設置することを目指し普及活動を行っています。
③FEMS(フェムス)
FEMSは「ファクトリー・エネルギー・マネジメントシステム」の略で、工場を対象としたエネルギー管理システムです。工場全体のエネルギー使用状況をチェックすることで、不必要な稼働時間がある機器やエネルギー消費量の多い機器を洗い出し、エネルギーを効率的に管理し削減することができます。
受配電設備のエネルギー管理、生産設備のエネルギー使用状況、稼働状況を「見える化」することで、データ細かく分析ができるため合理的な設備の省エネ化が可能になりました。
④MEMS(メムス)
MEMSは「マンション・エネルギー・マネジメントシステム」の略で、マンションを対象としたエネルギー管理システムです。MEMSを導入することで、個別の住戸ごとに管理するのではなくマンション全体のエネルギー使用量を管理し、空調や照明設備などを制御することが可能になります。
無理なく節電やピークカットを行えるようになりますが、各住戸の電力使用についてどの程度介入するかが課題となっています。
⑤CEMS(セムス)
CEMSは「コミュニティ・エネルギー・マネジメントシステム」の略で、地域全体を対象としたエネルギー管理システムです。近年、地域や自治体単位でエネルギーシステム改革が行われており、CEMSを導入し地域全体で脱炭素化を目指す動きが加速しています。
地域におけるエネルギーを「見える化」することで、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーを導入した際の電力供給量と消費量の不一致を解決することが可能になりました。
電力の消費量を把握することができると、供給量とのバランスを見て個人や企業に節電を促すこともできます。
CEMSを導入することで地域全体で効率的に電力を使用することができ、不必要に火力発電の出力を増やすことなくCO2削減にも繋がります。
EMS導入事例
①渋谷PARCO
1973年にオープンした渋谷PARCOは2019年11月に建て替え工事を完了し、リニューアルオープンしました。
渋谷PARCOは複合施設として省エネ・BCP対策が必須であり、BEMSを導入し建物全体のエネルギー使用状況や設備の稼働状況を「見える化」することで非常時のエネルギー自立と省エネの両立を実現しました。
環境に配慮した次世代型商業施設として高い評価を得ています。
②横浜市
横浜市は2010年から「横浜スマートシティプロジェクト」として民間企業と連携しCEMSを導入しています。各企業が次々に実証実験を繰り返し行い、2015年から実装がスタートしました。
総合庁舎の整備事業により、災害時でも業務を継続するために近隣の医療センターとエネルギー連携を行うことでエネルギーセキュリティを強化することができました。また、2040年までに一般公用車を次世代自動車であるEV車にすることを目指しています。
まとめ
EMSのメリットはコストの削減や生産性の向上が期待できることです。EMSの導入はコストがかかることはデメリットの1つですが、補助金制度を利用することでコストをできるだけ抑えることができます。
EMS導入によって見える化されたデータを上手に利用することでエネルギーを効率的に使用することができ、CO2削減にもつながります。
日本では現在2050年までに脱炭素社会を実現することを目標に掲げ、様々な施策を行っています。そのためにも、企業だけでなく個人でもエネルギーを効率的に使用し脱炭素化を進めていく必要があります。
大切な地球を守るためにもEMSを上手く使用し、共に脱炭素社会を目指していきましょう。