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気候変動について ーCOP30で目指す世界ー
2025/11/27
2025年11月、ブラジル・アマゾン川河口の都市ベレンで、世界が注目する国際会議「COP30(国連気候変動枠組条約第30回会議)」が開かれています。最近、世界中で記録的な暑さ、大きな台風や豪雨、深刻な干ばつなど、気候変動による被害が急速に増えています。日本でも毎年のように「観測史上最高」という言葉を耳にするようになりました。
このような危機的な状況に対して、世界の国々はどのように対応しようとしているのでしょうか。COP30は、気候変動対策の国際的な約束である「パリ協定」が決まってから10年という節目の年に開かれ、世界が本気で気候の問題に立ち向かう決意を示す大切な場となっています。
この記事では、COP30とは何か、なぜ今大切なのか、どのような話し合いが行われているのか、そして私たち一人ひとりにできることは何かについて、お話をしていきたいと思います。
COP30とは何か?
COPは「Conference of the Parties」の略で、日本語では「国が集まる会議」という意味です。気候変動に関する国際的な約束である「国連気候変動枠組条約」に参加している国々が集まる会議のことです。今回で30回目の開催なので「COP30」と呼ばれています。2025年11月10日から21日までの12日間、世界190か国以上から各国のリーダー、環境大臣、科学者、企業の代表、NGO、市民団体など数万人が参加し、地球規模の気候問題にどう対処するかを話し合います。会議では、温室効果ガスの削減目標、お金の支援、技術の協力、森林保全など、いろいろなテーマについて話し合いと交渉が行われます。
開催地ベレンが持つ意味
今回の開催地であるベレンは、地球の肺とも呼ばれるアマゾン熱帯雨林の入口に位置する都市です。この場所が選ばれたこと自体が、森林を守ることと生き物の多様性を守ることの大切さを世界に伝える強いメッセージとなっています。アマゾンは地球上の酸素の約20%を作り出し、たくさんの二酸化炭素を吸収していますが、近年は森林が壊されることが深刻な問題になっています。なぜ今、COP30が大切なのか
2025年は気候変動対策の大きな節目の年です。まず、2015年のパリ協定が決まってから10年という節目の年であり、この10年間の成果と課題を振り返る大切なタイミングです。しかし現状は厳しく、2024年には地球の平均気温が観測史上初めて年間を通じて産業革命前と比べて1.5度上昇しました。パリ協定が目指す「1.5度以内に抑える」という目標の達成が難しくなっています。さらに、一部の国では気候変動政策をやめる動きも見られるなど、世界的な「後戻り」が心配されています。こうした状況の中、COP30は世界が力を合わせて気候問題に立ち向かう強い意志を示し、具体的な行動を加速させる最後のチャンスとも言える大切な会議なのです。
COP30で話し合われる4つの大切なこと
COP30ではたくさんのテーマが話し合われますが、中でも特に大切な4つのことについて、詳しく見ていきましょう。1. 2035年に向けた各国の削減目標をもっと高くすること
パリ協定では、各国が5年ごとに新しい削減目標(NDC)を出し、かつ前回よりも高い目標を立てることが義務になっています。本当は2025年2月が2035年目標の提出期限でしたが、11月時点で正式に提出した国は少なく、多くの国が遅れています。今、各国が国連へ出している2030年の削減目標を全部足し合わせても、1.5度目標の達成には全然足りていないのが現実です。科学的には2035年までに60%削減が必要とされていますが、今の目標では大幅に足りていません。COP30では、この「目標と現実の差」をどれだけ埋められるか、そして2030年までの再生可能エネルギー3倍や森林破壊ゼロといった具体的な目標をどう進めるかが焦点となります。
大切なのは、こうした話し合いを次の2028年まで先延ばしにせず、今すぐ行動を早めることです。残された時間は多くありません。
2. 発展途上国へのお金の支援を具体的にすること
気候変動対策にはたくさんのお金が必要です。特に発展途上国は、洪水や干ばつなどひどくなる気候災害への対策と、温室効果ガスを減らすことの両方を同時に進めなければなりませんが、自分の国の予算だけでは全く対応できません。2024年のCOP29では厳しい交渉の末、2035年までに先進国が中心となって年間3000億ドルのお金を発展途上国に提供することが決まりました。しかし途上国側からは、公的なお金の役割が不明確で金額も足りないという強い不満が出ています。一方で、合計で年間1.3兆ドルを目指す「バクーからベレンへの道筋」が作られ、COP30で具体的にすることが期待されています。
途上国への支援は単なる援助ではありません。グローバル化した現代の経済では、企業が世界中に複雑な商品の流れを作っています。途上国で気候災害が起きれば、その流れが止まり、先進国の経済や消費者にも大きな影響が出ます。また、脱炭素の技術や防災の技術を持つ日本の企業にとっては、途上国での気候変動対策が進むことは新しいビジネスのチャンスにもなります。つまり、途上国への支援はお互いのためになる投資なのです。
3. 企業や自治体などの役割が大きくなること
最近のCOPで注目されているのが、各国の政府だけでなく、企業、都市、自治体、市民団体といった「非国家アクター」の積極的な活動です。過去10年間で、これらの主体により600を超える自主的な取り組みが立ち上げられており、政府間の交渉を良い方向へ導く大切な力となっています。会議を主催するブラジルは、「協働」を意味する「ムチロン」をキーワードに、いろいろな非国家アクターの取り組みを「行動アジェンダ」としてまとめる試みを進めています。すでに300以上の取り組みが、エネルギー、森林、農業、都市など30のテーマ別グループに分かれて活動しており、COP30でその成果が発表される予定です。
特に象徴的なのが、アメリカの動きです。連邦政府が再びパリ協定から抜けた中でも、州政府、地方自治体、企業など6000以上の主体が参加する「アメリカ・イズ・オール・イン」という団体が、引き続き気候対策に取り組むことを表明しています。国レベルの政策が後退する中でも、民間の会社と地方政府の前向きな姿勢が、世界の気候対策を支えています。
4. 森林を守るための新しい仕組みづくり
COP30は「ネイチャーCOP」とも呼ばれ、森林を守ることが大切なテーマの一つです。森林は空気中の二酸化炭素を吸い込んで貯めるだけでなく、たくさんの種類の生き物が暮らす場所でもあります。しかし、特に熱帯地域を中心に深刻な森林破壊が続いており、自然が失われることと温室効果ガスが出ることの主な原因となっています。2021年のCOP26では100か国以上のリーダーが「2030年までに森林が減ることを止める」ことに合意しました。COP30では、この目標を実現するための具体的なスケジュールや目印、進み具合を確認する仕組みづくりが求められています。また、気候変動の条約と生き物の多様性の条約との連携を強めること、森林破壊の主な原因である農業や畜産業を自然に配慮した生産・消費に変えることなども話し合われます。
特に注目を集めているのが、ブラジルが提案する「国際熱帯雨林保護基金(TFFF)」です。各国政府の公的なお金250億ドルを呼び水に、投資家や政府系のファンドから1000億ドルの民間投資を集め、合計1250億ドル規模の基金を作る計画です。その運用で得たお金で熱帯林を守る国々に年間40億ドルを提供します。お金は森林を守ったり回復させたりした面積に応じて1ヘクタールあたり4ドルを基準に支給され、破壊が起きた場合は減らされる仕組みです。お金の20%は先住民と地域の人々へ直接渡されることも求められています。COP30では、この新しい基金への各国のお金の出し方が注目されています。
まとめ:持続可能な未来へ向けて
COP30は、気候の問題に対する世界の取り組みを早めるためのとても大切な節目です。地球温暖化による影響は、もう将来の問題ではなく、今まさに私たちの生活に影響を与えている現実です。記録的な暑さ、ひどくなる台風や豪雨、海面が上がることによる水害のリスク、農作物への被害。これらは私たちの日常生活、経済活動、そして子どもたちの未来に直接的な影響を与えています。COP30の話し合いに関心を持ち、その成果を見守りながら、私たちにできることから始めてみませんか。省エネ、移動手段の見直し、食生活の工夫、賢い買い物。一つひとつは小さな行動かもしれませんが、その積み重ねが社会を変え、企業を動かし、政策を変える大きな力となります。
持続可能な未来は、誰かが与えてくれるものではありません。私たち一人ひとりの今日の選択と行動が、明日の地球を作ります。気候変動対策は、未来の世代への責任であり、同時に私たち自身の生活を守る行動でもあるのです。

