お知らせ
脱炭素社会に向けて取り組むべきこと
2021/09/10
2020年10月、第203回臨時国会の所信表明演説において、菅義偉内閣総理大臣は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。
カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現とは?
地球温暖化の主な原因は、温室効果ガスの増加とされています。
温室効果ガスとは、太陽からの熱を封じ込めて地表を暖める作用をもたらす、大気中のガスのことです。二酸化炭素(CO2)やメタン、一酸化二窒素、フロンガスといった種類がありますが、中でも地球温暖化に大きな影響を与えているとされているのは二酸化炭素です。この温室効果ガスの排出量を抑制し、排出された二酸化炭素を回収することで、温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにするというものです。
この地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出を抑制するという概念こそが「脱炭素社会」「カーボンニュートラル」と呼ばれています。
冒頭に触れた菅義偉内閣総理大臣の宣言後、2020年11月開催となった「G20リヤド・サミット」の環境問題をテーマにした会合のビデオ演説でも、菅首相は2050年の脱炭素社会の実現に向けた強い決意を示しています。また、2020年12月に開かれた成長戦略会議では、実行計画として「2050年カーボンニュートラルに向けたグリーン成長戦略」が打ち出されました。
このグリーン成長戦略とは、地球温暖化への対策に積極的に取り組むことで産業構造に変革をもたらし、経済と環境を好循環させる産業政策のことです。政府は、この実現への取り組みを、産業構造や社会経済の変革を通じた大きな成長につなげるべく、民間企業が保有する240兆円におよぶ現預金の活用を促し、雇用と成長を生み出すとしており、2050年で年額190兆円程度の経済効果を見込んでいます。また、電力部門の脱炭素化は大前提とした上で、産業・運輸・家庭部門の電化により、2050年の電力需要が現状から30~50%増加するとの試算に基づき、発電量に占める太陽光を中心とした再生可能エネルギーの比率を約50~60%に引き上げることを参考値として示しました。また今後の産業としての成長が期待され、温室効果ガスの排出削減の観点からも取り組みが不可欠な14の分野を重点分野と定め、実行計画を策定を行いました。
参考:環境省「地球温暖化対策計画」
参考:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を策定しました
■脱炭素社会における積極的な企業の取り組み
こうした動きは政府や自治体だけでなく、企業も積極的な取り組みが求められてきています。
特に再生可能エネルギーの活用は、すでに様々な企業が行っていますが、その中で国際的な動きとして注目されているのが「RE100」というものです。RE100は、「Renewable Energy 100%」の頭文字をとって命名されました。このRE100とは、企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブがあり、世界や日本の企業が参加しています。自社の事業を再生可能エネルギー100%で運営していくことを宣言するだけでなく、実現に向けた具体的な目標を設定した上で、目標達成へ向けた活動を報告書にまとめ、毎年事務局へ提出しており、参加企業は、グローバルで300社を超え(2021年7月上旬現在)、国別で日本は米国に次ぐ世界2位の社数を誇っています。
他にもEP100と言われるものもあります。こちらは「Energy Productivity100%」の略で、環境NGO「The Climate Group」によって運営されている国際的な取り組みです。 企業が目標を掲げ、エネルギー効率向上倍増や、エネルギーマネジメントシステム、あるいはビル全体として消費エネルギーゼロにする建物「ZEB(ゼブ)」導入を目指すもの、EV100と言われる「Electric Vehicle 100%」の略、運営団体はEP100・RE100と同じく「The Climate Group」です。2030年までに企業が事業で使用する車両をすべて、電気自動車化を目指す取り組みなどがあり、今後参加企業が増えることでこのような再生可能エネルギーの普及と、温室効果ガスの削減が急激に進みそうです。
■脱炭素社会は、二酸化炭素の排出量で価格が決まる?
直近では、新型コロナウイルス感染症の影響によるダメージを受けている経済界ですが、このような地球温暖化への取り組みが世界的なトレンドとなってきています。よく二酸化炭素を直接出すような業種ではないから必要ないと思われている企業様が奥いらっしゃるのですが、今後、扱う商品が大きくかかわってくることが予想されるのです。
例えば、フィンランドのスーパーでは商品の製造・輸送等で生じた二酸化炭素の排出量に応じて価格が決められているのです。
購入者は、必然的に価格の安い=低炭素商品を多く選ぶことになるのがおわかり頂けると思います。
将来的には、消費者の商品選択において、これが基準のひとつになることになるでしょう。
このように、これからどんな企業であれ、脱炭素経営を行うのが当然との認識となっていくでしょう。何もしないということは環境面で遅れている企業と映り多くのリスクが出てくる可能性があるのです。また脱炭素経営に取り組む企業は市場からの企業イメージが上昇し、結果として企業の業績を引き上げてくれる材料になり、企業にとって間接的なメリットが大きくなります。
■脱炭素社会の取り組みで直接企業が得られるメリット
1.エネルギーコスト削減が見込める
企業が健全な経営を維持するには、売上増加と経費削減によるキャッシュの確保が重要です。
まず、企業が経費削減を考える際に注目したいのが、 「オフィスコスト」 「オペレーションコスト」 「エネルギーコスト」 の3大コストと呼ばれるものです。
中でも 「エネルギーコスト」=電気料金の削減は、取り組みやすく効果が大きいです。また太陽光発電システムを導入などであれば、「余った電力を売電できる」などのメリットがあります。
2.人材採用
実は、これが就活生や転職者の企業選びの基準になりつつあるのです。
日本総研の発表によると、環境問題や社会課題に取り組んでいる企業で働く意欲がある若者は全体で47.2%となり、大学生に関しては55.3%に上っています。
優秀な人材の確保は多くの企業の課題となっていますが、その面でも脱炭素の活動がメリットとして働くのです。
このように市場から評価されるため今、脱炭素化に取り組むことは、企業にとって競争力を強化する絶好の機会になります。
企業が脱炭素経営にシフトするには、膨大なコストがかかるようにも見えます。確かに設備投資が必要ですが、長い目でみればコスト削減が見込めます。できることから始めていく、当事者意識を持った行動が、これからの企業のスタンダードな考え方となっていくでしょう。