お知らせ
ゼロエミ・チャレンジ
2021/10/08
経済産業省は、(一社)日本経済団体連合会や NEDO、農林水産省と連携して、2050年カーボンニュートラル(Society 5.0 with Carbon Neutral)の実現に向けたイノベーションに挑戦する企業をリスト化し、投資家等に活用可能な情報を提供するプロジェクト「ゼロエミ・チャレンジ」をスタートしました。この「ゼロエミ・チャレンジ」とはどういうものかを紹介します。
「ゼロエミ・チャレンジ」の背景
2020年10月、第203回臨時国会の所信表明演説において、菅義偉内閣総理大臣は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言したことを経団連やNEDOは英断でありこれを高く評価しました。実現には、産業革命以来の人類とエネルギーの関わりの抜本的変革、主要産業の生産プロセスの革新、運輸・民生部門での革新的製品等の大規模な普及や生活様式の転換等、経済社会全体を根底から変革し、新しい経済社会(”Society 5.0 with Carbon Neutral”)の実現が不可欠と考え、(一社)日本経済団体連合会は政府とともに不退転の決意で取り組むこととしました。
Society 5.0 with Carbon Neutral(新しい経済社会)の詳細は大きくわけて生産プロセスや製品等の革新とエネルギーシステムの革新の2つになります。これらの実現によりグローバル展開(基準認証、排出量クレジット取引等の活用)を可能になります。
Society 5.0 with Carbon Neutral(新しい経済社会)にむけて
■生産プロセスや製品等の革新
~産業面~
・水素還元製鉄等のゼロカーボン製鉄技術の確立
・セメント製造におけるカーボンリサイクルの確立
・CO2を原料に用いたプラスチック製造の確立
・バイオマス燃料を用いた紙製造の確立等
~運輸面~
・電気自動車・燃料電池車等の電動車の開発
・普及・水素等のゼロエミ船の開発
・普及・合成燃料(e-fuel)の大量生産に向けた技術開発等
~民生面~
・ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)の普及
・ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング(ZEB)の普及
・エネルギーの面的利用の普及等
■エネルギーシステムの革新
~電力~
・電源の脱炭素化(再エネ+蓄電池、原子力、脱炭素化された火力等)
・次世代電力システムの構築・産業
・運輸・民生の各需要部門における電化の推進等
~水素~
・エネルギー需要の水素化に向けた研究開発
・実証・安価な水素を潤沢に供給するサプライチェーン構築
・メタネーションの商用化等
経済界の課題と役割
これを受けて取組むべき課題を大きく下記の3つとしました。
①脱炭素エネルギーの安価で安定的な供給
②産業部門での脱炭素生産工程の確立
③運輸・民生部門での革新的製品・建物の供給などにおいて、積極的役割を担う
これらを行うためには、「経済と環境の好循環」の実現が不可欠と考えて具体的な取り組みとして、「ゼロエミ・チャレンジ」が誕生しました。つまり「ゼロエミ・チャレンジ」とは。「革新的環境イノベーション戦略」の39テーマに挑戦する企業や、経団連の「チャレンジ・ゼロ」により脱炭素社会の実現に向けたイノベーションに果敢に挑戦する企業を、「ゼロエミ・チャレンジ企業」と位置づけて、国内外へ発信する集団の事をいいます。
■「革新的環境イノベーション戦略」の39テーマ
Ⅰ.エネルギー転換
1.再生可能エネルギーを主力電源に
① 設置場所の制約を克服する柔軟・軽量・高効率な太陽光発電の実現
② 地下の超高温・高圧水による高効率発電(超臨界地熱発電)の実現
③ 厳しい自然条件に適応可能な浮体式洋上風車技術の確立
2.デジタル技術を用いた強靱な電力ネットワークの構築
④ 再生可能エネルギーの主力電源化に資する低コストな次世代蓄電池の開発
⑤ 系統コストを抑制できるデジタル技術によるエネルギー制御システムの開発
⑥ 高効率・低コストなパワーエレクトロニクス技術等の開発
3.低コストな水素サプライチェーンの構築
⑦ 製造:CO2フリー水素製造コスト1/10の実現
⑧ 輸送・貯蔵:圧縮水素、液化水素、有機ハイドライド、アンモニア、水素吸蔵合金等の輸送・貯蔵技術の開発
⑨ 利用・発電:低コスト水素ステーションの確立や、低NOx水素発電の技術開発
4.革新的原子力技術/核融合の実現
⑩ 安全性等に優れた原子力技術の追求
⑪ 核融合エネルギー技術の実現
5.CCUS/カーボンリサイクルを見据えた低コストでのCO2分離回収
⑫ CCUS/カーボンリサイクルの基盤となる低コストなCO2分離回収技術の確立
Ⅱ.運輸
6.多様なアプローチによるグリーンモビリティの確立
⑬ 自動車、航空機等の電動化の拡大(高性能蓄電池等)と環境性能の大幅向上
⑭ 燃料電池システム、水素貯蔵システム等水素を燃料とするモビリティの確立
⑮ カーボンリサイクル技術を用いた既存燃料と同等コストのバイオ燃料・合成燃料製造や、これら燃料等の使用に係る技術開発
Ⅲ.産業
7.化石資源依存からの脱却
(再生可能エネルギー由来の電力や水素の活用)
⑯ 水素還元製鉄技術等による「ゼロカーボン・スチール」の実現
⑰ 金属等の高効率リサイクル技術の開発
⑱ プラスチック等の高度資源循環技術の開発
8.カーボンリサイクル技術によるCO2の原燃料化など
⑲ 人工光合成を用いたプラスチック製造の実現
⑳ 製造技術革新・炭素再資源化による機能性化学品製造の実現
㉑ 低コストメタネーション(CO2と水素からの燃料製造)技術の開発
㉒ CO2を原料とするセメント製造プロセスの確立/CO2吸収型コンクリートの開発 他
Ⅳ.業務・家庭・その他・横断領域
9.最先端のGHG削減技術の活用
㉓ 分野間の連携による横断的省エネ技術の開発・利用拡大
㉔ 低コストな定置用燃料電池の開発
㉕ 未利用熱・再生可能エネルギー熱利用の拡大
㉖ 温室効果の極めて低いグリーン冷媒の開発
10 .ビッグデータ、AI 、分散管理技術等を用いた都市マネジメントの変革
㉗ 技術の社会実装の加速化(スマートシティの実現)
11.シェアリングエコノミーによる省エネ/テレワーク、働き方改革、行動
㉘ シェアリングエコノミー/テレワーク、働き方改革、行動変容等の促進
12.GHG削減効果の検証に貢献する科学的知見の充実
㉙ 気候変動メカニズムの解明/予測精度向上、観測を含む調査研究、情報基盤強化
Ⅴ.農林水産業・吸収源
13 .最先端のバイオ技術等を活用した資源利用及び農地・森林・海洋へのCO2吸収・固定
㉚ ゲノム編集等バイオテクノロジーの応用
㉛ バイオマスによる原料転換技術の開発
㉜ バイオ炭活用による農地炭素貯留の実現
㉝ 高層建築物等の木造化やバイオマス由来素材の利用による炭素貯留
㉞ スマート林業の推進、早生樹・エリートツリーの開発・普及
㉟ ブルーカーボン(海洋生態系による炭素貯留)の追求
14 .農畜産業からのメタン・N2O排出削減
㊱ イネ品種、家畜系統育種、及び農地、家畜の最適管理技術の開発
15.農林水産業における再生可能エネルギーの活用&スマート農林水産業
㊲ 農山漁村に適した地産地消型エネルギーシステム構築
㊳ 農林業機械・漁船の電化、燃料電池化、作業最適化等による燃料や資材の削減(農林水産業のゼロエミッション)
16.大気中のCO2の回収
㊴ DAC(Direct Air Capture)技術の追求
個社が何に取り組み、技術開発のどの段階にあるのかを見える化する「ゼロエミ・チャレンジ企業リスト」を作成し一般に公開します。
そしてテーマごとに、社会実装に向けたシナリオ、市場規模等の情報を示すとともに、企業のマッピングも実施していくそうです。
そして今回、624社の企業リストを作成し、TCFDサミット2021の場において、公表しました。
参加企業リストです。
新たに就任した萩生田経済産業大臣はも、2050年の脱炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギーの最大限の導入や安全性が確認された原発の再稼働などに取り組む考えを示しました。
気候変動対策は待ったなしの課題です。
今後、このように脱炭素化社会へ拍車がかかっていくと考えられています。