お知らせ
第27回気候変動枠組条約締約国会議
2022/12/05
2022年11月、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開かれていた気候変動対策の国連の会議「COP27」(第27回気候変動枠組条約締約国会議)。
今年は、2週間にわたる交渉を経て会期を延長し、現地時間の20日早朝、成果文書を採択しました。
どんな内容だったのか振り返りたいと思います。
COP27では、気候変動対策の各分野における取組の強化を求める全体決定である「シャルム・エル・シェイク実施計画」、2030年までに野心や実施を強化するための「緩和作業計画」が採択されました。
「シャルム・エル・シェイク実施計画」とは、昨年の「グラスゴー気候合意」の内容を踏襲しつつ、緩和、適応、ロス&ダメージ、気候資金等の分野で締約国の気候変動対応の強化を求める内容です。
「シャルム・エル・シェイク実施計画」
「シャルム・エル・シェイク実施計画」では、科学的知見と行動の緊急性、野心的な気候変動対策の強化と実施、エネルギー、緩和、適応、ロス&ダメージ、早期警戒と組織的観測、公正な移行に向けた道筋、資金支援、技術移転、パリ協定第13条の強化された透明性枠組み、グローバル・ストックテイク(GST)、パリ協定第6条(市場メカニズム)、海洋、森林、非国家主体の取組の強化等を含む内容が決定された。同決定文書は、昨年のCOP26全体決定「グラスゴー気候合意」の内容を踏襲しつつ、緩和、適応、ロス&ダメージ、気候資金等の分野で、締約国の気候変動対策の強化を求める内容となっている。
緩和分野では、グラスゴー気候合意の内容を引き継いで、パリ協定の1.5℃目標に基づく取組の実施の重要性を確認するとともに、2023年までに同目標に整合的なNDC(温室効果ガス排出削減目標)を設定していない締約国に対して、目標の再検討・強化を求めることが決定された。また、全ての締約国に対して、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電の逓減及び非効率な化石燃料補助金からのフェーズ・アウトを含む努力を加速することを求める内容が含まれている。
さらに、グラスゴー気候合意において毎年開催することが決定された、2030年までの緩和の野心に関する第1回閣僚級会合が開催され、日本からは西村環境大臣が参加した。
気候資金については、世界全体の資金の流れを気候変動の取組に整合させることを目的としたパリ協定2条1(c)に関する理解を促進するための「シャルム・エル・シェイク対話」の開始を決定したほか、グラスゴー気候合意で決定された先進国全体による適応資金支援の倍増の取組に関する報告書作成が決定された。
その他、生物多様性と気候変動への統合的対処、都市の役割、公正な移行等が記載された。
決定文書の交渉に当たり、我が国からは、引き続きグラスゴー気候合意に基づいて、全締約国が野心的な気候変動対策を実施していくべきことを主張した。特に、緩和分野におけるパリ協定の1.5℃目標達成に向けた取組は、現下の国際情勢においても手を緩めるべきでなく、そのために、全ての締約国が1.5℃目標に整合的な強化されたNDC及び長期戦略の提出を求める文言が必要であること等を提案した。
外務省(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27) 結果概要)より出展
緩和作業計画のポイント
パリ協定の1.5℃目標に基づく取組実施の重要性が確認され、取組の対象や進捗確認のタイミングなどが決められました。全ての締約国に対して排出削減対策を講じていない石炭火力発電の段階的な削減と非効率な化石燃料への補助金の段階的な廃止を含む努力の加速することとパリ協定に整合的なNDCを2023年までに設定していない締約国に対して目標の再検討と強化。
※NDC:国が自主的に定め、決定する温室効果ガス排出削減目標
最大の焦点となっていた気候変動による被害「損失と損害」
1995年に始まった、このCOPですが、当初から、温室効果ガスを制限なく排出し、発展を遂げてきた先進国と、異常気象による洪水や干ばつなどで甚大な被害を被り、不公平な現実を訴えてきた途上国との間で対立が続いていました。今回、厳しい交渉で決まったのが、「損失と損害」を補償する基金の設立されました。
ただ現段階では、気候変動による「損失と被害」の認定基準も定まっておらず、資金調達の具体的な方法や透明性確保についても不確定な部分が多く、今後も協議を続ける必要があります。
しかしながら長い課題の解消に向けて、大きな一歩を踏み出した形となりました。
COP27 気候変動の被害支援する新たな基金創設へ“画期的合意” (NHK)
史上初「若者のためのブース」設置
近年、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん、ヴァネッサ・ナカテさんなど10代、20代の環境活動家をはじめ多くの若者が声を上げています。このCOP27では「若者のためのブース」が正式に用意され、世界中から注目をあびました。
「Children and Youth Pavilion(子どもと若者のパビリオン)」と名付けられたブースに、若者が主導する団体や、若者の参加を支援する組織によって運営されディスカッションや政策提言を行いました。
今回のCOP27の開催地であるエジプトを含むアフリカ大陸では、気候変動の影響をもろに受ける脆弱な地域が多いことに加えて、全体の人口の77%が35歳以下の若者です。
今回若者を招き、その声を聴くことの意義は大きく、世代や立場を超えて、幅広い人々が声を交わし合う機会が増えていくことが予想されます。
COP27 会場で若者が気候変動対策訴える 日本の大学生も参加(NHK)
こういった盛り上がりを見せる中、全世界では、企業と政府が協力して排出量の削減に取り組み、誰もが気候変動対策資金を利用できる体制を整え、適応に向けた取り組みを拡大させてきています。
現在、日本ではまだエネルギー消費の習慣を変える圧力は大きくありませんが、今後確実に変化を求められる時代が来ると予想されます。