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海外の省エネルギーに対する取り組み
2024/03/18
省エネルギーは、私たちが取り組まなければならない最も重要な課題の一つです。
地球温暖化や気候変動といった環境問題が日々深刻化する中で、エネルギーの効率的な利用はますます不可欠となっています。
環境問題は私たち日本だけの問題でなく、世界全体での課題でもあります。
そこで、今回のコラムでは「海外の省エネ事情」にスポットを当てて最新の取り組みを紹介していきます。
海外の環境問題
海外の環境問題への対応は、気候変動や地球環境の変化に注目が高まる中で、世界各国が最新技術を活用して省エネ対策を進めています。
例えば、EUでは再生可能エネルギーの利用を積極的に推進し、エネルギー効率の向上や温室効果ガスの削減に向けた政策を積極的に展開しています。
持続可能な社会の実現はもちろんですが、化石燃料価格の上昇や地政学的な不安定要因によるエネルギー価格の高騰などの背景もあります。
また、急速に発展する新興国である中国やインドでも同様に、経済成長と人口増加に伴い、エネルギー需要が急速に増加しています。
この急激なエネルギー需要の増加は、排気ガスによる大気汚染、温室効果ガスの排出などの環境問題を引き起こしています。
海外各国の省エネ事情
それでは、各国がどのような省エネ対策を行っているかドイツ、中国、インドを例に出して具体的にみていきましょう。
①ドイツの省エネへの取り組み
ドイツでは、再生可能エネルギーの利用を拡大し、二酸化炭素排出量を大幅に削減するという目標を掲げています。特に、ドイツが行っているエネルギー転換である「エネルギーウェンデ」は世界的な注目を集めています。
エネルギーウェンデとは、2011年にドイツ政府が決定した化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を促進し、核エネルギーの段階的な廃止を進め、2030年に再生可能エネルギーの割合を50%にする目標を掲げる政策です。
ドイツのエネルギー転換において、風力や太陽光発電などの再生可能エネルギーの利用が急速に拡大しています。特に太陽光発電は進化を遂げ、家庭用や商業用の太陽光パネルの設置が一般的になっています。
また、エネルギーウェンデで重要な要素の1つが核エネルギーの廃止です。これは、2011年の福島原発事故を受けて世界的に原子力発電所の安全性への懸念が高まり、ドイツ政府は原子力の段階的な廃止を決定しました。
しかし、エネルギーウェンデ政策には多くの課題や問題があります。
再生可能エネルギーへの転換には膨大な費用が必要であり、これが電気料金の上昇やエネルギー政策のコスト負担となります。また、太陽光発電や風力発電は天候や気象条件に左右されるため発電量が不安定になることも課題です。
そして一番の懸念点は、ドイツ国民の中でエネルギーウェンデに対する賛否両論が存在し意見が別れていることです。
電気料金の上昇やエネルギー供給の安定性への懸念などが批判の対象となり、エネルギーウェンデに対する反対運動も起こっています。
これらの課題を解決し、目標を達成するためにもドイツでは政府、産業界、市民が協力し合い持続可能なエネルギー体制の実現に向けて努力を続けています。
②インドの省エネへの取り組み
インドは経済の急速な成長に伴い、エネルギー需要が顕著に増加しています。このエネルギー需要の増加は家庭用電力から工業用エネルギーまで広範囲に及び、その結果、エネルギー配給の安定性と持続可能な社会の実現に対する危機感が高まっています。
インド政府は2030年までに再生可能エネルギーの割合を著しく拡大し、電力生成における再生可能エネルギーのシェアを40%以上にするという大きな目標を掲げています。
これには、太陽光発電、風力発電、小水力発電など、多様な再生エネルギー設備への大規模な投資も必要不可欠になっています。
インドの省エネへの取り組みは、他の発展途上国と比較していくつかの独自性が見られます。特に、エネルギー効率に関する法規制の強化、緑化計画、公共交通の促進、商業ビルのエネルギー効率に関する規則など政府が主導するプロジェクトが多いことも特徴の1つです。
また、省エネルギーのための様々なプロジェクトにお金を貸すためのエネルギー効率金融プラットフォーム(EEFP)という制度があり、コスト面での課題解決にも取り組んでいます。このぷらっとドームがあることで、民間のエネルギー効率向上プロジェクトへの貸付や投資が活発に行われ、エネルギー効率の高い技術の普及が支援されています。
さらに、製品のエネルギー使用を表示するラベルを採用し、エアコンや冷蔵庫など、様々な家電製品にどれくらいエネルギーを使うかを明記しています。このラベルのおかげで、ユーザーが自ら省エネルギーの商品を選ぶことができるようになりました。
今や、インドにとって省エネルギーは経済成長に欠かせないファクターです。エネルギー効率の向上と再生可能エネルギーへの移行は、長期的なエネルギー安全保障の強化と低炭素社会の実現を支える重要な基盤となっています。国民を巻き込んだ広範囲にわたるインド政府の省エネ対策は、今後ますます拡大されていくことが予想されます。
③中国の省エネへの取り組み
中国は世界最大のエネルギー消費国であり、中国の急速な工業化と都市化は、大量のエネルギー消費と二酸化炭素の排出量の増加をもたらしました。これは地球温暖化と大気汚染などを引き起こし、多くの負担が生じているため、積極的な省エネルギー対策が求められています。中国では再生可能エネルギーの開発に力を入れており、特に太陽光発電と風力発電の拡大に注力しています。
太陽光発電では、結晶シリコン太陽電池の効率向上に注力し、この最新の技術は太陽電池の変換効率が20%以上に達するものも珍しくありません。また、ペロブスカイト太陽電池という新材料を使用した研究も進んでいて、これは将来的により高い効率と低コストを実現する可能性があります。さらに建物の屋根や壁に直接組み込めるビルディングインテグレーテッド型太陽光発電技術の開発も進められ、中国の太陽光発電における技術革新は世界をリードしています。
風力発電においては、深海に設置可能な浮体式風力発電の技術の開発が進められています。
これにより従来の海底固定式と比べて設置場所の制約が少なく、より効率的に風力を利用できるようになります。
これらの急速に進化した中国の技術は世界的なクリーンエネルギー市場における中国の地位を確固たるものにしています。
まとめ
世界各国が省エネルギー化に積極的に取り組むのは、環境保護だけでなく経済発展をする上で欠かせないという背景もあります。
エネルギーをより効率的に利用し、無駄を削減することは企業や国家のエネルギーコストを低減させます。エネルギー効率の良い技術や製品の利用・開発は、長期的な目線で考えると経済成長に必要なエネルギー供給の持続可能性を高め、エネルギーコストの削減を通じて国際競争力強化に貢献します。
省エネルギー化は、地球規模での環境問題への対応という責任を果たすとともに、国家の持続可能な未来を確保するための戦略的な選択としても重要です。
今後、持続可能な社会の実現に向けてどのような最新技術が登場するのか注目しつつ、世界各国で競いつつも協力し、持続可能な社会の実現に向けて進んでいきましょう。