お知らせ
COP29が示す未来への道標
2024/12/25
近年、気候変動による影響が私たちの生活に直接的な影響を及ぼす事例が増えています。豪雨や干ばつ、異常気象による自然災害の多発は、もはや他人事ではありません。
地球の平均気温はすでに産業革命以前と比べて1.1℃も上昇し、パリ協定で掲げられた「気温上昇を1.5℃以下に抑える」という目標達成も厳しい状況にあります。
そんな中、COP29(第29回気候変動枠組条約締約国会議)は、2024年の11月に開催され、世界がともに取り組むべき課題と具体的なアクションを話し合う場として大きな注目を集めました。
今回のコラムではCOP29で決まったことや将来に向け私たちはどう行動するべきかについてまとめていきます。
COP29 具体的な行動計画
気候資金の拡充
COP29において、発展途上国への気候資金の拡充が最大の焦点の1つとなりました。気候変動による影響をもっとも受けやすいのは、実は温室効果ガスの排出量が少ない途上国です。洪水や干ばつといった自然災害が頻発し、農業や住居の崩壊に直面するこれらの国々では、適応策や災害対策のための資金が緊急に求められています。
今回、2035年までに年間3000億ドルの気候資金を提供することが合意されました。この金額はこれまでの年間1000億ドルから大幅に増額されたものであり、発展途上国が直面する問題解決に向けた重要な一歩です。
この資金は再生可能エネルギーの導入やインフラの強化、気候変動に伴う災害リスクの軽減に充てられる予定です。
しかし、この合意にはいくつかの課題も残されています。
途上国側からは「3000億ドルという金額は気候変動対策に必要な額には足りない」との声が上がっています。また、資金提供が実際に開始されるまでのタイムラグが問題視されており、2030年代を待つことなく迅速な支援が求められているのが現状です。
カーボンクレジット市場の国際ルール策定
以前より議論を続けていたカーボンクレジット市場の国際ルールが今回のCOP29で合意されました。カーボンクレジット市場とは、温室効果ガス削減の目標を達成するために、排出量を取引できる仕組みのことを指します。
例えば、再生可能エネルギーを導入して排出量を削減した企業が、その削減分を他の企業や国に売却することで、全体の排出量を効率的に減らすことができます。
今回の合意により、カーボンクレジットの信頼性や透明性が高まり、各国や企業がこの仕組みを活用しやすくなりました。
この市場は年間最大2500億ドルのコスト削減効果が見込まれており、特に先進国と発展途上国の協力を強化するツールとして期待されています。
途上国が自国の再生可能エネルギーのプロジェクトを進める際、このクレジットが資金源となる可能性もあります。
一方でいくつかの課題も残っています。
まず、カーボンクレジットが不適切に使用されるリスクが指摘されています。一部の企業や国が「クレジットを購入すれば実質的な排出削減をしなくても良い」と考えるような事態を防ぐため、厳格な監視体制が必要です。また、発展途上国が不利な条件で取引を迫られることがあり、公平なルールの適用も重要です。
カーボンクレジット市場は気候変動対策の新たな柱として注目されていますが、仕組みを正しく運用するためには、各国間の協力と透明性の確保が不可欠です。
COP29でのルール合意が実際の成果を産むまでの道のりは長いでしょう。
温室効果ガス削減目標のさらなる強化持ち越し
今回、各国が掲げる温室効果ガス削減目標のさらなる強化が議題に上がりました。パリ協定の目標である「気温上昇を1.5℃以下に抑える」ためには、各国の目標が現状のままでは不十分であることが指摘されています。しかし、今回の会議では具体的な目標強化には至らず、国によっても温度差がある結果となりました。
緩和目標の強化が次回以降に持ち越しされたことは、帰国変動対策全体の遅れにつながる可能性もあります。しかし、これを機に各国が自主的に目標を見直し、より実効性のある政策を模索する動きが期待されています。
気候適応目標の継続協議
気候変動による影響を最小限に抑えるため、各国が適応策を実行することは喫緊の課題です。例えば、海面上昇による浸水被害を防ぐ堤防の建設や、干ばつに強い農作物の開発などがあります。COP29で気候変動への適応目標を国際的に設定する「グローバル・ゴール・オン・アダプテーション」についての議論が設けられましたが、これは具体的な指標や目標設定が次回以降に持ち越されることになりました。
この背景として、適応策が各国の状況に大きく依存するという問題があります。例えば、島国では海面上昇が最優先課題である一方、内陸国では干ばつや熱波への対応が重視されます。そのため、全世界で統一された目標を設定することが難しいのです。
次回のCOP30では各国の状況を反映した柔軟な指標の設定が求められ、全ての国が気候変動に適応するための準備を進められる環境が整うことが期待されています。
COP29を受けて日本が行動するべきこと
COP29で合意された内容を踏まえ、日本が果たすべき役割は大きく分けて3つあります。
気候資金提供の強化
日本は国際的な責任を果たすために、気候資金の拡充を行うこととなります。既存のODA(政府開発援助)を活用するだけでなく、新しい資金調達方法を検討し、アジア諸国を中心とした支援を強化することが求められています。技術革新と国際協力のリーダーシップ
日本は省エネ技術や再生可能エネルギー技術において世界をリードする国の一つです。COP29を機に、これらの技術を国際社会に広めるための積極的な行動が必要です。例えば、発展途上国における再エネ導入の支援や、カーボンクレジット市場における透明性確保のための技術提供が考えられます。また、日本は地域的な協力枠組みを通じてASEAN諸国との連携を深めることで、温室効果ガス削減と経済発展を両立させるモデルを示すことが期待されています。
国内での排出削減目標の強化
日本国内でも、温室効果ガス削減目標の達成に向けた取り組みを加速させる必要があります。具体的には「再生可能エネルギー普及拡大」「交通セクターの脱炭素化」「省エネルギー政策の強化」などの行動が重要になってきます。まとめ
COP29で示された合意は、地球規模の気候変動問題に向けた重要な一歩でした。気候資金の拡充、カーボンクレジット市場のルール策定、削除目標や適応目標の議論は、それぞれが私たちを支える基盤となるものです。
私たちの今の行動が、未来の私たちの生活にどのような影響を与えるのか?を想像して見てください。今回示された課題や行動指針は私たちがより良い未来を過ごすためにどのような行動をすれば良いかのヒントになります。
気候変動問題は企業や政府主導で動いていくだけでなく、私たち一人一人が自分ごととして捉えていくことが100年後の未来も豊かな地球で暮らすことができる近道です。