お知らせ
CSRからESGへ
2025/08/27
はじめに
「CSR(企業の社会的責任)」や「ESG(環境・社会・ガバナンス)」という言葉は、耳にはしたことがあるものの、具体的な違いや自社でどう取り組むべきか、悩んでいる企業や経営者も多いのではないでしょうか。今回は、CSRとESGの概念を丁寧に整理し、ESG経営を自社の実践につなげるポイントをわかりやすくご紹介していきます。
CSRとは何か?
CSR(Corporate Social Responsibility)は、企業が利益追求だけに留まらず、環境保全、地域社会への貢献、公正な労働・人権対応などを通じて社会的責任を果たす考え方です。CSRは「やらなければならない」取り組みとされることが多く、企業の善意や社会貢献活動を中心に位置づけられる傾向があります。ただし、CSRには以下のような課題もあります:
- 活動が善意偏重に終わる傾向:寄附や地域支援など、企業の事業と直接結びつかない活動になってしまうケース。
- 戦略的側面が不足しがち:CSR活動が経営戦略と融合せず、継続性やインパクトに乏しいケース。
ESGとは?—投資家からも注目される経営の新基準
ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字を取った概念で、企業が持続可能な成長を遂げるための重要な3つの視点を示します。以下に少し具体的な項目を記載いたします。(ESG超入門より)
Environment(環境)
・温室効果ガス排出量の削減を行なっているのか?
・生物多様性の保全に積極的か?
・環境ビジネスを展開しているのか?
・再生可能エネルギーを活用しているか? など、
Social(社会)
・労働環境の改善を行なっているのか?
・個人情報保護が高い水準か?
・女性管理職の比率は高いか?
・人材育成を行なっているのか?
・セクハラなどの対策は行われているのか?など、
Governance(ガバナンス/企業統治)
・法令を順守しているのか?
・情報開示に積極的か?
・社外取締役を設置しているのか?
・公正な競争を行なっているのか?
・データ改ざんなどは行われていないか?など
ESGが注目された背景
- PRI(責任投資原則)制定(2006年) によって、企業の非財務的価値を投資の判断材料にする流れが始まりました。
- 日本年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のPRI署名(2015年) により、日本でもESG投資の注目度が急激に高まりました。
ESG経営の位置づけ
CSRが「社会への責任」に基づく活動に留まるのに対し、ESGは投資家評価の対象になる非財務情報を戦略に組み入れた経営です。つまり、経営の中核としてESGを組み込む姿勢こそが、企業価値向上につながります。期待されるメリット
- 資金調達がしやすくなる:ESGに積極的な企業は投資家からの評価が高まり、融資や出資・株式発行において有利です。
- ブランド力向上や人材確保:社会的な評価が高まり、顧客からの信頼や優秀な人材を引き寄せます。
- リスクの軽減:不祥事や社会的課題への対応力が高まり、経営リスクも低減されます。
CSRからESGへの転換—経営モデルの変革
CSRからESGへの移行は、「活動」から「戦略」への進化と言われています。重要な転換ポイント
- 戦略への統合
ESG活動をCSR的な善意の取り組みに留めず、経営の長期戦略に組み込むことが不可欠です。たとえば統合報告書によって、非財務情報と財務情報を有機的に結びつける“統合思考”経営が求められます。 - 透明性と開示の強化
ESG対応は内部で黙って進めるのではなく、ステークホルダーや投資家に理解される形で開示する必要があります。 - イノベーションの促進
気候変動目標や多様性促進目標などを設定することで、社内に新しい発想や具体的な事業機会を生むきっかけになります。 - ガバナンスの強化
ガバナンス体制を整え、企業倫理・リスク管理・取締役会運営を見直すことで、信頼性が高まります。
ちなみに、「非財務情報」がESGに挙げられる項目になります。
人的資本、知的財産など、定量化が難しい定性的な情報を指します。これらは企業の過去の業績だけでなく、将来の持続的な成長力や価値創造能力を示す「未来の可能性」を測る指標と言われています。
日本企業におけるESG実践事例
ここでは、日本でESG経営に注力している代表的な企業の取り組みを紹介します。JR東日本の取り組み
- 環境:2030年度までにエネルギー使用量を50%削減する目標を掲げ、2021年度時点で既に14.9%減を達成しました。
- 社会:サービス品質の改善や子育て支援、多様顧客への対応、人材育成、文化活動支援など社会側面にも広く配慮している。
- ガバナンス:安全を最優先し、徹底したリスク管理とコンプライアンス体制を強化中。
積水ハウスの取り組み
- 組織体制の整備:「環境部会」「社会部会」「ガバナンス部会」を設置し、組織横断的にESGに取り組む体制を構築しています。
- 環境対応:社用車の電動化(CO₂排出量削減)、オフィスのLED化によるコスト回収を含めた環境配慮施策を実施。
- 社会対応:男性育児休業取得の義務化など、働き方改革と人権配慮に積極対応。
トヨタ自動車(海外含む参考)
- 「トヨタ環境チャレンジ2050」を通じ、CO₂ゼロを目指す長期ビジョンを明示し、社会・ガバナンス面でも幅広い貢献活動を推進している。
実践のためのステップ
自社でESG経営を始める際の具体的なステップをお話していきます。- ESG専門の部署や推進チームの設置
組織全体を巻き込み、責任者を明確にして活動を動かす土台をつくります。 - 現状把握と課題の洗い出し
環境負荷や労働環境、ガバナンス体制などを分析し、自社の強みと改善点を整理します。 - 具体的施策と目標設定
例:CO₂排出削減、育児休業制度、取締役会の構成改善など、数値や期限を伴う目標を立てましょう。 - 経営方針やMVV(Mission・Vision・Value)との連携
ESGを経営理念と結びつけ、社内文化に根づかせます。 - 経営層からのコミットメント表明
トップ自らがメッセージを発信し、組織に対してESGの重要性を示すことが効果的です。 - PDCA(計画→実行→確認→改善)サイクルの運用
定期的なレビューと報告を通じて、持続的な改善を図ります。 - ESGレポートや統合報告書として公開
外部に向けた開示を行うことで信用力向上や評価獲得につながります。
よくある悩みとその解決策について
- 「何から始めればよいか分からない」
→「環境」「社会」「ガバナンス」のいずれか、身近で影響が出やすいテーマから小さく試すことが重要です! - 「コスト負担が怖い」
→ 短期的にはコスト増でも、中長期的には信頼向上や効率改善につながります。 - 「情報開示に抵抗がある」
→ 完璧でなくても透明性の姿勢を示すこと自体が信頼の一歩。改善プロセスを公開する姿勢も評価されます。 - 「短期成果が出ないのでは?」
→ ESGは即効性のある取り組みではなく、将来のリスク軽減や持続成長を狙う、中長期視点の経営が求められます。
まとめ
CSRからESGへの移行は、単なる言葉の変化ではなく、企業が未来に向けて持続的価値を創造するための経営革新です。まず、CSRとの違いを整理し、目指すべき方向としてESGを「戦略」として取り入れること。そのうえで、小さな一歩—例えば省エネ施策や働き方改革、ガバナンスの見直し—から始め、目標を公表し、PDCAを回しながら改善していきましょう。
これまで企業の在り方とは関係なく、ボランティア等を行うことが社会貢献の活動だったという機運がありましたが、ESGはもっと自主的に、もっと企業の企業らしさが反映された活動であることが求められます。カタチだけでなく、どんな選択と行動を取っているのかを、若い世代も見ているということです。
もちろんそこに投資会社が面白さや持続性を見極めて、投資のお金が実際に動くということもありますが、人材の流れもまたそこに資産として存在していることを認識していく必要があるでしょう。
ESGの取り組みに関しては、その課程や成果を統合報告書やESGレポートとして開示することで、企業としての信頼と価値を着実に積み上げていくことに繋がります。未来を見据えた経営の第一歩として、今日からぜひ取り組んでみてください。