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SAFでクリーンに! 空のカーボンニュートラル

2025/10/28


 

世界が「脱炭素社会」に向けて動き出す中、陸上だけでなく「空」でも環境対策の必要性が高まっています。
CO₂排出量が多いとされる航空業界では、環境への負荷を減らすための新たな取り組みが求められています。
そんな中で注目されているのが、「SAF(サステナブル・アビエーション・フューエル:Sustainable Aviation Fuel)」― 持続可能な航空燃料です。

私たちは日々、出張や旅行などで航空機を利用していますが、その快適さの裏で、航空業界は世界全体のCO₂排出量の約2〜3%を占めていると言われています。
もしこのまま航空需要が増え続ければ、その割合はさらに拡大してしまいます。
だからこそ、いま「空のカーボンニュートラル」は世界共通の課題として注目されているのです。

この記事では、SAFとは何か、なぜカーボンニュートラルに欠かせないのか、そして企業や私たちが今からできる準備について、専門的な内容を解説していきます。

 

SAFとは? 持続可能な航空燃料の正体

SAFとは「Sustainable Aviation Fuel」の略称で、日本語では「持続可能な航空燃料」と呼ばれます。
これまで飛行機の燃料には、原油を精製した化石燃料(ジェット燃料)が使われてきました。しかし、その燃焼過程で発生するCO₂は地球温暖化の一因となっており、航空業界全体の課題となっています。

そこで登場したのがSAFです。
SAFは、使用済みの食用油、バイオマス(動植物由来の資源)、廃棄物、さらには大気中のCO₂を原料として生成される燃料で、従来のジェット燃料に比べて最大80%のCO₂削減が可能だと言われています。

飛行機のエンジンや燃料供給システムを変えずに利用できる点も大きな特徴です。つまり、「これまでと同じように飛ばせるけれど、ずっとクリーンな空を目指せる燃料」なのです。

SAFにはいくつかの製造方法があります。たとえば「HEFA(廃油・動植物油脂由来)」や「FT合成燃料(廃棄物・バイオガス由来)」などです。
最近では、水素とCO₂を合成して作る「e-fuel(合成燃料)」の研究も進んでおり、将来的には再生可能エネルギーを活用した完全カーボンフリー燃料の実現も見込まれています。

 

SAFが注目される背景と世界の動き

SAFが注目されている理由は、国際的な「脱炭素目標」の存在にあります。
2015年に採択された「パリ協定」では、地球温暖化を抑制するため、温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」が掲げられました。

航空分野では、国際民間航空機関(ICAO)が「CORSIA(国際航空のカーボン・オフセットおよび削減スキーム)」を導入しました。航空会社に対し、CO₂排出量の把握と削減を求めています。

海外では、欧州連合(EU)やアメリカがSAFの導入を加速。各国が生産支援や補助金制度を整え、特にEUでは2030年に航空燃料の20%以上をSAFとする義務化方針が進んでいます。

 

日本でも国土交通省や航空会社が連携し、2030年までに国内航空燃料の10%をSAFに置き換えるという目標を掲げています。

JALやANAなどの国内航空会社も、すでに一部の国際線でSAFを利用した運航を開始しており、石油会社や商社、地方自治体と連携して国産SAFの開発プロジェクトも立ち上がっています。
これらの動きが示すのは、SAFが「未来の空の標準燃料」になるという確かな流れです。

 

SAFとカーボンニュートラルの関係

「カーボンニュートラル」とは、温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きゼロにすること。
飛行機が飛ぶ際に排出するCO₂を完全にゼロにすることは技術的に難しいため、排出量を減らす努力と、吸収・回収によるバランス調整が必要です。

この中で、SAFは航空業界の“カーボンニュートラル実現のカギ”とされています。
SAFを使用することで、原料の段階で吸収されたCO₂分を考慮すると、燃焼時の排出を相殺できる「カーボンリサイクル」が成り立ちます。
つまり、化石燃料を新たに掘り出さずに済むため、地球全体のCO₂量を増やさないという発想です。

ただし、SAFだけで完全にカーボンニュートラルを実現するのは難しく、今後は再生可能エネルギーやカーボンオフセットとの組み合わせも重要になります。
空港施設の電力を再エネ化する、航空機整備での廃棄物削減を進めるなど、総合的な取り組みが必要です。

 

SAF導入が企業にもたらすメリット

航空会社や関連企業にとって、SAF導入は単なる「環境対策」ではなく、経営戦略の一環にもなりつつあります。

まず一つ目は、環境価値の向上です。
SAFを導入することで、CO₂排出削減という明確な実績を示すことができ、ESG経営(環境・社会・ガバナンス)やSDGsへの取り組みとして社外からの評価を得られます。

二つ目は、ブランド価値の向上です。
環境意識の高い顧客や投資家からの信頼を得やすくなり、「未来志向の企業」としての認知が高まります。

三つ目は、サプライチェーン全体への波及効果
物流・製造・観光など、航空業界と関わるあらゆる企業が、SAF導入企業との取引を通してサステナブルな価値を共有できます。
特にBtoBビジネスでは「グリーン調達」「カーボンフットプリント」への意識が高まっており、SAFを利用すること自体が取引の条件になるケースも増えていくでしょう。

 

SAF導入の課題と今後の展望

一方で、SAFにはまだいくつかの課題があります。
もっとも大きいのは、生産コストの高さ供給量の少なさです。 現状では、従来のジェット燃料に比べて数倍のコストがかかると言われています。

また、世界的に需要が高まる中で、原料となる廃油やバイオマスの確保、精製技術、輸送インフラの整備など、解決すべき課題も多くあります。

しかし、こうした課題に対して各国で研究開発が進んでおり、再生可能エネルギーから合成する「e-fuel(合成燃料)」の技術も台頭しています。
日本国内でも、自治体や大学が連携し、地域で出る廃棄油や木質バイオマスを活用した国産SAF生産の動きが始まっています。
今後10年で生産コストは下がり、供給体制が整うと見られており、SAFの普及は大きく加速していくでしょう。

 

企業が今からできる準備と取り組み

SAFの導入は、航空会社だけの課題ではありません。
関連業界や一般企業も、「自社として何ができるか」を考える段階に入っています。

まずは、自社のCO₂排出量を可視化することから始めましょう。
環境報告書やCSR活動の一環として、サプライチェーン全体の排出を把握し、削減計画を立てることが第一歩です。

次に、SAFの動向を継続的にウォッチし、取引先や物流パートナーとの情報共有を進めることも重要です。
また、社員の意識改革や教育活動も欠かせません。
社内でカーボンニュートラルの意味やSAFの役割を共有することで、組織全体が「サステナブルな視点」を持って行動できるようになります。

 

まとめ:SAFでつくる、持続可能な空の未来

SAFは、空のカーボンニュートラルを実現するための鍵となる技術です。
まだ課題は残されていますが、確実に世界のスタンダードへと向かっています。

飛行機を使って移動することが当たり前の時代だからこそ、空をクリーンに保つ努力は、私たち一人ひとりの選択にも関わってきます。
企業として、そして個人として、地球にやさしい選択を積み重ねていくことが、持続可能な未来への第一歩です。

クリーンな空を、次の世代へ――
SAFが描く未来は、もうすぐそこまで来ています。

運営会社情報

株式会社新出光ファシリティーズ
URL:https://if.idex.co.jp/
【事業コンセプト】
「新エネルギー・省エネ・スマートエネルギー」関連事業について、
調査・計画・シミュレーション・設計・施工・メンテナンスまでの一貫したサービスを、
お客様や各種メーカー様の立場になって、責任を持って提供いたします。